経営業務の管理責任者とは
資格さえあれば建設業許可って何とかなるんでしょ?
とよく聞かれるんですが、→結論から言うと
資格だけではダメなんです
建設業許可を取得するにあたって、5つの要件というのがありますが、その中でも特に重要で難しいのが、この経営業務の管理責任者(略して経管)と呼ばれるものです。
冒頭のような質問をされることがあるのですが、過去に一定期間以上建設の経営経験をしたことがある方がいなければなりませんので資格とかで代用して経営業務の管理責任者になることはできないんです。
ご相談を受けている中で、現状では取得が無理だと判断するケースのうち、この経営業務の管理責任者がいない、というのがおそらく半数以上を占めてきます。
経管が満たせないということが多過ぎるためなのか、建設業法を改正して経管をなくしてしまおうという案が出たのですが、2020年10月の法改正では結局存続しました。
気休めのような緩和はあるんですが、かえって分かりにくくなりました。
以下でできるだけやさしく解説をしてみたいと思いますが、なかなか理解しにくいと思いますし、自社が当てはまるかどうかは、ぜひ当センターの無料相談をご利用ください。
今回の改正で認められるようになった5パターンが以下の表になり、それぞれを解説していきますね。
目次
イ.以前と同様のパターン
イ(1)役員(取締役、事業主など)として5年以上建設業の経営を経験
イ(2)権限の委任を受け準ずる地位として5年以上の建設業の経営経験がある
イ(3)経営者に準ずる地位として6年以上経営者を補助した経験がある
ロ.新しく認められたパターン(経営業務管理責任者と補佐者のチーム体制)
ロ(1)
ロ(2)
※経営業務の管理責任者についての質問
イ.以前と同様のパターン
以前とほとんど同じですが、以前は建設業許可を取りたい業種と経験した業種が同じかどうかで分けられていましたが、今は建設業であればどんな業種であっても構わなくなりました。
具体的には、建設業許可を取りたい業種が「建築一式工事」、経営を経験した業種が「内装工事」という場合、6年の経験が必要でしたが、この改正で建設業であればどんな業種かは問われず一律5年の経営経験でOKになりました。
イ(1)役員として5年以上建設業を経営してきた経験がある
一番多いパターンになります。
取締役や個人事業主、支配人、建設業許可業者の営業所長(令3条の使用人)などの役職で建設業を経営していた方になります。
経営実績を裏付けとして証明する必要がありますが、何が要求されるかは都道府県によって違います。
あと、取締役、個人事業主経験と違い、建設業の営業所長をしていたという令3条の使用人に関しては過去の建設業許可申請書の中できちんと所長として名前が挙がっていたことが必要になります。
今までご相談を受けた中で多かったのは、
- 出張所の扱いで特に建設業許可申請では申請されていなかった。
- 営業所としては申請されていたが、その代表としてはお名前がなかった。
- 申請書の写しなどを元の会社から借りられなかった。
ということで申請できないというものでした。
営業所長などは登記されるわけではないので、あくまでその業者さんの過去の申請書でしか確認ができません。
行政への文書開示請求もできますが、過去の文書を行政が処分しているとどうしようもないため、喧嘩別れなども含めるとなかなか営業所長の経験を持って経営業務の管理責任者の証明をしていくのは厳しいかと思います。
イ(2)権限の委任を受け準ずる地位として5年以上の建設業の経営経験がある
具体的には執行役員を指すのですが、主に大企業にあるパターンかと思います。
執行役員制度自体は法律で定められたものではなく、あくまで会社内の役職になります。
ですから会社で制度を制定し、各執行役員の権限を決めて就任させることになります。
執行役員に関しても登記をするわけではありませんから、登記簿謄本のような誰が見ても分かる証拠がありません。
そのため、制定した規程や、執行役員に就任したことが議事録等で分かること、建設業に関しての権限を持っていたことなども経験期間の5年間の証拠として提示することになりますので、役職上だけとか、名刺でただ名乗っているだけ、というのではダメです。
細かくは各行政ごとでの対応になりますが、東京都などは独自のガイドラインを設けてなかなか認めようとしないなど都道府県によってまだまだ温度差がある状況です。
イ(3)経営者に準ずる地位として6年以上経営者を補助した経験がある
こちらに関してよくあるのは取締役直下の工事部長などの地位や、個人事業主の下の番頭さんのような方が当てはまります。
これに関しては6年以上の経験が必要になります。
以前は経験した業種の経管にしかなることができませんでしたが、今は6年以上の経験が必要にはなりますが、全ての業種の経管になることができます。
ロ.新しく認められたパターン(経営業務管理責任者と補佐者のチーム体制)
こちらのロの2パターンは今回の改正で新たに作られました。
一番特徴的なことは下記のロ(1)、ロ(2)の2パターンのいずれかを満たす方がいる場合には、さらにその補佐ができる方を配置して、複数人で経営業務管理体制を整えることを認めているということです。
その補佐ができる人の経験は、ロ(1)、(2)のいずれのパターンであったとしても下記のような方になります。
- (1) 5年以上建設業の財務管理の経験を有する者
- (2) 5年以上建設業の労務管理の経験を有する者
- (3) 5年以上建設業の業務運営の経験を有する者
※一人でこの3つ全てを満たす方でもいいですし、複数人でこれらの3つを個別に満たしても構いません。
※補佐に関しての経験は申請を行う許可業者での経験しか認めてもらえないので、少なくとも設立後5年以上経過した会社でしかあり得ないということになります。
次に、このような補佐をできる方がおられる場合においてあとはどんな経験を持った役員が必要になるかを下で説明していきます。
ロ(1)
まず取締役や執行役員として建設業の経営について2年以上の経験があること。
さらに、建設業について財務・労務・業務運営いずれかについて役員等に次ぐ地位での経験をして上記の2年以上の経験と加えて5年以上経験している場合。
(例:財務部長として3年間建設業の財務を担当した後に、執行役員に就任して2年以上建設業を管理した、など)
ロ(2)
まず取締役や執行役員として建設業の経営について2年以上の経験があること。
さらに、他の会社で建設業以外の取締役や、同じ会社でも建設業以外の執行役員などの経験をして上記の2年以上の経験と加えて5年以上経験している場合。
(例:執行役員として3年間不動産事業を担当した後、建設業担当執行役員になって2年経過した)
※執行役員、準ずる地位、上記のロに該当するケースに関しては様々な書類を要求されますので申請する行政に対して事前打ち合わせが必須になります。
経営業務管理責任者についてよくある質問
Q.建設業許可を取ってからすぐに経営業務の管理責任者が辞めてもいいのですか?
A.辞められた時点で他に経営業務管理責任者になることができる方がいない場合、その時点で許可がなくなることになってしまいます。
たとえ5年後の更新の時点で経営業務管理責任者の条件を満たす方がおられたとしても、前任者と後任者の間に1日でも空白があると更新もできません。
Q.経営業務の管理責任者が亡くなった場合はどうなりますか?
A.これも上の質問と同じで、亡くなられた時点で他に経営業務の管理責任者になることができる方がいない場合、その時点で許可がなくなることになってしまいます。
ずっと維持するために常に複数の経営業務の管理責任者の候補を常に置いておきたいですね。
Q.過去に許可不要の軽微な工事をずっとやってきたのですが、経営業務管理責任者の経験にできますか?
A.もちろん問題ありません。建設業許可を新規で取得される場合に一番多いパターンです。
自社や、過去の個人事業での経験を証明して取得するパターンですので、申請先の役所が要求する過去の実績となる証拠を揃えて提示する必要はあります。
Q.建設業許可のない会社の営業所長をしていましたが、経営業務の管理責任者の経験にできますか?
A.その会社の取締役、執行役員でない場合は経営業務の管理責任者にはなることができません。ただ、経営者に準ずる地位として証明できるのであれば経営業務の管理責任者になることができるかもしれません。
他社の常勤が条件の役職、例えば宅建免許業者の取引士、建築士事務所の管理建築士などとの兼任も不可能です。
他社の代表取締役との兼任を不可としている役所もあります。
Q.会社としての社歴は長いのですが、経営陣がごっそり入れ替わって取締役経験が5年経過していません。その場合は経営業務の管理責任者としては認められないのでしょうか?
A.会社としての経営実績が長くても経営業務の管理責任者になることができるのは取締役経験が5年以上ある方が必要ですので、この場合は経営業務の管理責任者としては認められません。
現在は上記のロの経験も認められるようになったので複数人で経営管理体制を満たせるといいですね。
ただ、取締役就任前の期間が経営業務の管理責任者に準ずる地位にあったということが認められる場合であれば、取締役期間と合わせて6年以上あるのであれば、経営業務の管理責任者になることができるかもしれません。
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