公共工事を受けるまでに建設業者がやらないといけないこと
うちの規模では公共工事を直接受注するなんて関係ない・・
そんなふうに思われていませんか?
元請か下請かを問わなければ、建設業をされている方のうち公共工事に携わっている方というのはかなり多いのではないかと思います。
下請業者として公共工事の現場に入ることに関しては、建設業許可さえあれば問題ありません。(500万円未満の工事であれば、建設業許可も本来は必要ありません。元請のゼネコン等が許可を必須として要求してくることが多いですが・・。)
ただし、元請として公共工事を受注したい場合は、いろいろと準備をしなければいけませんのでその流れについてここでは解説しておきます。
公共工事を元請として受注するまでにやらなければならないことの流れ
(1)建設業許可を取得する
(2)経営事項審査申請をする ※ 経営事項審査申請についての解説はこちらへ
(3)入札参加資格審査申請(指名願い)をする
(4)工事の入札の種類
(5)入札金額の算出について
(6)公共工事についてのQ&A
(1)建設業許可を取得する
公共工事を役所から元請として直接受注したい場合は500万円未満の建設業許可が要らない小規模工事であっても建設業許可は取得しておかなければなりません。
建設業許可を取得するまでの詳しい流れはこちらのページに書いてありますが、都道府県庁の場合は申請してから早くても1カ月、長い場合は2カ月ほどかかります。
国土交通大臣許可なら3,4カ月もかかりますので、これだけで相当な時間がかかってしまうことになります。
(2)経営事項審査(経審)申請をする
一般的には決算終了後に毎年受け続ける必要があります。この審査で、建設業者としての評価点数がつけられます。
この点数に応じて、発注者である役所が業者をランク分けしたり、選別したりします。
経審についても詳しくは、こちらのページに書いてありますが、この経営事項審査(経審)の結果を出すまでに具体的には決算終了後に 決算変更届 → 経営状況分析 → 経営事項審査
と3つの申請をする必要があります。
※建設業許可さえ取得できれば、会社設立直後で決算が終わっていないときでも経審は受けることができます。点数は低くなりますが・・。
(3)入札参加資格審査申請(指名願とも言われたりしています)をする
工事を受けたい省庁や、都道府県、市町村ごとに申請をする必要があります。
1年に一度、だいたい10月ごろから2月頃までに受け付けられますが、その時期を逃すと、1年間は申請できないことが多いので、十分に注意をしてください。
国の省庁や都道府県などはたいてい随時受付といって、1年中入札参加資格申請の受付をしてくれるところが多いですが、小さな市町村であれば年に1度だけの申請受付の可能性が高いです。
タイミングによっては1年近く待つしかなくなることもありますので、どの役所の公共工事を受けたいのかを考えて受付時期をウェブサイトなどで調べておくのが良いでしょう。
(4)工事の入札の種類
上のメニューの(1)から(3)を全てやれば、入札できるようになります。
ただ一口に入札と言っても大きく分けて3種類のパターンがあります。
○一般競争入札:役所が設ける基準をクリアしていればどの業者でも入札できます。
まあ自由競争みたいなもんですね。
○指名競争入札:役所が業者を数社指名して、一番安いところが落札できることになります。
○随意契約:役所が一社を指名して契約します。競争は無しです。
通常は金額の大きな工事ほど一般競争入札になるという感じですね。
一般競争のものは官公庁等のホームページで公開されますので、それで入札
していくということになります。
(その他には、建通新聞などで入札情報が出ますので、それを元に入札するということもよくあります。)
これらの3種類のパターンですが、金額が大きいものから順番で一般競争入札、指名競争入札、随意契約と決められています。
いくらからそうなるのかは発注する自治体によってまちまちです。
以前は指名競争が多かったと思いますが、どうしても指名される業者が決まってきてしまい、談合になりやすかったということから、今は7割程度の工事が一般競争入札になっています。
一般競争入札の工事については参加資格(地域であったり、経審の点数であったり)さえクリアできれば業者の数は制限はありませんので、公共工事の実績がない場合は一般競争入札の工事にどんどん入札していくことになりますね。
指名競争入札や随意契約については実績のある業者に役所が声をかける場合が多いこともあり、一般競争入札の工事で実績を作ることが大切になるでしょう。
(5)入札金額の算出について
入札の際にはもちろん入札金額を提出し、基本的にはその金額を一番低く提示した業者さんが公共工事を落札します。
以前は最低制限価格という、その金額未満の入札をすると失格になるという金額がはじめからオープンになっていましたので、みんなその額で入札し、くじ引きで落札が決まるというのが通常になっていました。
だから、公共工事が『当てものみたいでおもしろくない』と言う業者さんがかなり多くいたんですね。
ただ、最近では最低制限価格が落札されるまでは一切公表しないということが普通になってきた上に、平成26年に法律が改正され、入札金額の内訳(つまり見積もりの詳細内容)を記した書類の添付が義務化となりました。
当然ざっくりとした総額ではだめで、実際に見積もりを作ってから入札に臨む必要があるということですね。
確かにその都度正確な見積もりを作るのは大変なんですが、支出を事前に把握して、自社にとってプラスになる案件かどうかを見極めるのは大切なことです。
実際に当事務所のお客様とお話ししていても、見積もり能力の差が、会社の利益や資金繰りなど経営に反映されていると感じます。
見積もり金額の算出にあたっては、費用を一つ一つ積み上げていく「積算」という作業を行います(積算については書籍やセミナー等を探して学ぶことになります)。
なお、積算は昔と違い積算ソフトで行うことが一般的です。積算ソフトはかなりの高額になるのですが、当事務所が提携しているエージェンシーソフトの積算ソフト「頂(いただき)」は、それら高価なソフトの数分の一の値段で同等の積算ができるので、よくおすすめしています。
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公共工事のQ&A
Q:下請はどんな業者でもいいのか?
A:下請業者さんは特に制限はありません。
もちろん、下請業者さんが税込500万円以上の請負金額になるようであれば、建設業許可を持っている必要はあります。
あと、最近は公共工事専門のマッチングサイト案件タンクというものがあり、公共工事を下請で手伝ってくれる協力業者募集を探すのにはかなり使えると思います。
逆に自社が専門工事が得意でどこかの下請で専門工事をやっていきたいという場合も協力業者として登録しておくとよいと思います。
Q:公共工事の全体の流れを知るためのおすすめのものはないか?
A:インターネットで調べてもあまり詳しい部分まで分かりやすいサイトとかはありませんね。
知り合いの水嶋さんが書かれた公共工事の経営学という書籍ですが、公共工事のことが非常に分かりやすくまとめられていますので、参考になると思います。
Q:建設業許可取ってすぐに、経審を受けたり、入札に参加したりできるの?
A:できます。建設業許可さえ取れば、経審はすぐに受けることができます。
点数はあまり高く望めませんが、さらに指名願(入札参加資格審査申請)をすれば、入札にも参加できることになります。
Q:入札参加資格審査申請(指名願い)をしても2,3年は工事は出来ないんでしょ?
A:そうでもありません。
よくそのように言われていますが、特に小規模な工事の場合は、1年目から指名されて、工事を受注できるということがあります。
役所にも地元の業者を育てていこうという気持ちが強く働いているのかもしれません。
なかなか工事を取ることができないということももちろん多いですが・・。
Q:最低価格の入札ばっかりで儲からない。
A:確かに今は最低価格ばかりの入札ですね。
談合も電子入札などによって対策が取られ、かなりやりにくくなっています。以前のように決しておいしい仕事ではなくなってしまっています。
ただ、それでも利益を上げているのは、自社請け、自社施工できるところで、今まで民間で下請工事をしていてコストをギリギリまで下げさせられてきた業者さんかなと思います。
あくまで、私の個人的な感想ですが・・。
Q:地元以外のところに申請して仕事は取れるの?
A:小さな市町村で小さな工事はおそらく取れません。
地元業者は評価の点数なども優遇されますので、他市の業者さんへ発注することはめったにありません。よほど特殊な技術を持っていないと無理でしょう。
しかし、大きな政令指定都市などは他市の業者でも比較的仕事が発注されることがあります。
Q:地元とはどこのことになるの?
A:例えば東京の場合であれば新宿区に本社を置く会社であれば、新宿区が発注する工事と東京都が発注する工事に関して地元業者ということで入札しやすくなります。
また、大阪などの場合であると、大阪市北区に本店がある場合、大阪市の工事と大阪府の工事を地元業者として入札できます。
東京の特別区のように、区ごとに発注する訳ではありませんので、大阪市全体に対して入札参加できますね。
あと、意外と国の官公庁の出先機関の工事も近くの業者に発注される場合があります。例えば、税務署とかハローワークなど)
その場合は、財務省とか厚生労働省にも指名願(入札参加資格審査申請)を出しておかなければなりません。
Q:うちは会社の規模が小さいから仕事は取れないよね?
A:そうでもありません。
規模が小さい場合は経審の点数は低くなりますが、低いからといって指名願すら出せないということはありません。
規模に応じた小さな工事も結構発注されていますので、そういう工事が取れる可能性は十分あります。
Q:指名願さえ出しておけば仕事は取れるの?
A:こればっかりは全く分かりません。
経審には少なくとも実費の3万円弱を含むがかかりますし、私たちのような行政書士が代行する場合はその手続き報酬もかかります。
それも毎年受けなければなりませんので、元すら取れないということも残念ながらあります。
一つでも受注できればその程度は一気に利益となるのですが・・。
Q:経審を受けるとその点数とかが公表されるの?
A:公表されます。CIIC(財団法人建設業情報管理センター)のHPに掲載されますので、売上、資本状況などが全部他社にも分かってしまいます。
以下は公共工事について少し解説した動画です。